Netflixの企業カルチャーについてまとめられた本『NO RULES』を先日読み終えた。
これがここ最近のなかではもっともしびれる1冊だった。
ぜひ内容をまとめたい。
Netflixが実践する、イノベーティブな組織に必要な3つの原則
- 能力密度を高める
- 率直さを高める
- コントロールを減らす
1. 能力密度を高める
そもそも優秀な人物だけを集めた組織であれば、細かい業務規程やマネジングは必要ない。Netflixでは、ここでいう“優秀な”人物というのは、圧倒的なパフォーマンスを誇るスタープレーヤーのことを指している。
この、凡庸なメンバーを排除するという考え方は、次のような経験則に則っている。
たとえば最高のメンバーが5人、凡庸なメンバーが2人というチームがあるとしよう。その場合、
・凡庸なメンバーに手がかかり、管理職は最高のメンバーに時間をかけられなくなる。
・凡庸なメンバーが議論の質を低下させ、チーム全体のIQが落ちる。
・他のメンバーが凡庸な2人に仕事の方法を合わせるため、効率が下がる。
・最高の環境を求める社員が転職を考えるようになる。
・社内に凡庸でも構わないというメッセージが伝わり、状況はさらに悪化する。
そして、組織に残ることができるスタープレーヤーとは、次のような人物だ。
どんな会社でも、たいてい優秀な社員と「まあ、ふつう」の社員がいる。「まあ、ふつう」のほうは指示を受けて働く一方、スタープレーヤーは持てる力を振り絞って働くことが期待される。ネットフリックスは違う。ここはいわば抜群に優秀な者だけが立ち入りを許された場所、誰もがスタープレーヤーだ。ミーティングに行けば、才能と知性のパワーで発電できそうなくらいだ。互いの意見に疑問を投げかけ、激論を闘わせる。誰もがスティーブン・ホーキング博士よりも賢いんじゃないかと思えてくる。信じられないようなスピードでこれほどの仕事ができる理由はここにある。とんでもなく能力密度が高いのだ。
そうして、スタープレーヤーだけは組織に残り続け、それ以外の凡庸なメンバー、または比較的優秀な程度のメンバーは、高額な退職金を受け取り、組織から去らなければならないこととなる。
2. 率直さを高める
Netflixに所属する全ての人々はその他全ての人々にフィードバックを与える必要がある。また全てのフィードバックを受け入れる必要がある。
ネットフリックスでは、同僚と違う意見があるとき、あるいは誰かに役立ちそうなフィードバックがあるときに口にしないことは、会社への背信行為とみなされる。会社の役に立てるのに、そうしないことを選択しているのだから。
一方、フィードバックは、それがフィードバックであればどんな内容でも許可されているわけではない。特に管理職は、適切なフィードバックを適切に行うために、相当な研修を受け、また相当な時間を書けてその方法を習得していくことになる。ここでは、適切なフィードバックを適切な方法で行うために、Netflixで実践されている「4つのA」についてまとめておきたい。
1. AIM TO ASSIST(相手を助けようという気持ちで):自分のイライラを吐き出したり、自分の立場を強くするためのフィードバックは不適切である。相手を助けようという気持ちで、また会社の役に立つために、言葉や表現を選ぶべきだ。
2. ACTIONABLE(行動変化を促す):相手にとって不十分な点を示すだけでは、フィードバックとしては不適切である。フィードバックを受け、それを改善するために、具体的にどのような行動を取るべきかが明瞭に分からなければならない。
3. APPRECIATE(感謝する):フィードバックを受けた側は、それを単なる批判と捉えるのではなく、その内容を真摯に受け止め検討するべきである。受けたフィードバックに対しては決して自己弁護に走ったり言い訳をしたりしてはいけない。
4. ACCEPT OR DISCARD(取捨選択):フィードバックのカルチャーが浸透している組織では、たくさんのフィードバックがやりとりされることとなる。受けたフィードバック全てに耳を傾け検討する必要はあるが、常にすべてのフィードバックに従う必要はない。そして、フィードバックを与える側も、そのフィードバックを相手が受け入れるかどうかは受け手側は決めることであると認識しておかなければならない。
3. コントロールを減らす
スタープレーヤーが集まる組織では、出張規程、経費規程、休暇規程等、あらゆる社内規程は不要である。イノベーティブな組織では、社員の行動はルールではなくコンテキストで判断されるべきだからだ。
現在ネットフリックスの出張旅費と経費に関するガイドラインは次の一文である。ネットフリックスの利益を最優先に行動する
このガイドラインに則れば、出張の際、メンバーがどんな飛行機のチケットを取るべきか、それぞれのメンバーがコンテキストに則って判断することができるようになる。
コンテンツチームの全員がロサンゼルスからメキシコシティまでビジネスクラスに乗るのは、ネットフリックスにとって最善の選択ではない。しかしロサンゼルスからニューヨークに深夜便で飛び、翌朝重要なプレゼンをするのであれば、ビジネスクラスに乗るほうがネットフリックスの利益を最優先にすることになるだろう。いざ本番というときに、目の下に隈ができ、くたびれた様子では話にならない。
また、Netflixでは経営指標に連動するボーナスは、一切支払われていない。これは次の理由による。
ボーナスという仕組みそのものが「未来は予測可能であり、ある時点で設定した目標はその後も重要であり続ける」という前提に基づいていることを学んだ。しかし急激な環境変化に対応して迅速に会社の方向を修正しなければならないネットフリックスにおいて、社員の12月のボーナスをその年の1月に決定した目標に応じて決めるというのは一番やってはいけないことだ。社員がその時点で会社にとって何が最善かではなく、目標を達成することに集中してしまうリスクが生じるからだ。
以上の3点、「能力密度を高める」「率直さを高める」「コントロールを減らす」を実践することで、最高のメンバーが集い、最高のパフォーマンスを発揮し続ける組織を形成することができる。
もちろん、この組織を形成するためには多くの犠牲を伴うだろう。また、ほとんどの企業にとって、この組織カルチャーは“やりすぎ”だし“不適切”かもしれない。
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