反逆の戦略者 DISRUPTORS 感想5

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PART 15. ビジネスモデルを拡張せよ

南アフリカの新聞社 ナスパーズ(ナショナルプレス、De Nationale Pers Beperkt)はビジネス史上最大のピボットに成功した企業だ。2001年に3200万ドルで投資したテンセントは、2018年3月現在、その企業価値が1640億ドルにまで至っている。

ナスパーズは元々、南アフリカのアパルトヘイト政策に加担していた、保守的でレガシーな会社だったと言える。ただ、1984年に業務執行取締役に任命されたヴォスルーは「アパルトヘイトと少数派白人による支配は必ず終わるから、そのときに備えなくてはならない」と考えていた。そんなとき、ニューヨークのコロンビア大学の学生であったベッカーは、ヴォスルー宛に次のようなFAXを送った。「HBOのようなサブスクリプションモデルを、南アフリカの衛星放送でやればうまくいくのではないか」と。ヴォスルーは役員会を招集しベッカーにプレゼンをさせ、その後すぐにベッカーを事業責任者に指名したのだった。

ビジネスモデルの拡張には、ときにベッカーのように完全なアウトサイダーから新鮮な文化を取り入れる必要がある。また、ヴォスルーが描いていたような未来の脅威に目を光らせ、自分たちの責任でその変化に備え、変革を推進していったのだった。


PART 16. 危機をチャンスに変えろ

シーツやタオル、ラグなどを提供するインドの大手サプライヤー ウェルスパン・インディア(Welspun India)は、2016年8月、大きな危機に見舞われた。ウェルスパン製のシーツが、実際には非エジプト綿であったのにも関わらずエジプト綿として納品していたことが判明したのだ。これにより一気に株価は下落、また数週間のうちに5件の集団訴訟が起こされた。そんななか、ウェルスパンはある戦術により絶体絶命のピンチを乗り越えることができたばかりか、サプライチェーン全体の透明性を実現できたのだった。

具体的には次のとおりだ。まず、被害を受けた小売パートナーにはいくらかかっても損害額を全額補償することを発表した。また製品を購入した顧客には全額返金することを申し出た。これにより、一時的な支出は嵩んだものの、結果としてウェルスパンに対するイメージと信頼は強化された。

また「消費者が自身で商品を原料までさかのぼって追跡できる仕組み」の構築を始めた。農場の綿俵にRFIDを付け、農場→綿繰り器→糸→生地→縫製へとすべての段階を追跡することができるようにした。こうした完全なトレーサビリティの追跡は消費者にもウケた。消費者は、生地の由来や品質に高い透明性を求めており、その情報を得るためには追加費用を払っても良いと考えているという事実が分かってきたからである。

存亡の危機に直面したウェルスパンは、迅速な意思決定と意欲的な発想、そして危機を逆手に取って将来の価値を構築するための技術と戦略により、かえって企業ブランドを強固にすることができたのだった。


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これで全ての章をまとめ終えることができた。やたらと時間がかかった。次から同じような本を読むときは、1章1章それぞれをまとめるのではなく、全体論を簡単にまとめるようにしなければ。そうでないと読書が続かなくなってしまいそうだ。


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