反逆の戦略者 DISRUPTORS 感想2

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PART 2. チームを奮い立たせろ

不可能を可能にするという建築施工会社のアラップは、ロンドンの超高級ホテル「クラリッジズ・ホテル」の地下5階分の拡張工事を “ホテルは工事中も全館で営業を続けること”・“建設機材やコンクリートの半出入に使うのはホテルの裏口に限ること” という条件で引き受けている。不可能で無謀と思われる案件にこそ、エンジニアリング魂が燃えるのだという。

アラップは、決して上意下達の組織ではなく、優秀な人材が命令されずとも協力して働き、挑戦しがいのあるプロジェクトに夢中になって取り組む「チーム」である。トップ自身が「勤続35年の社員より新入社員のほうが優れた知識とスキルを持っている時代」「自分のネットワークを通じて問題を解決し、Youtubeで自己教育するような彼らが、ベテラン社員の専門知識に価値を置く階層構造の内向きの会社に入りたいと思わないのは当然だ」と語り、その組織像を実現しているのだ。官僚主義を一掃し、クリエイティブな職場文化のもと、優秀な人材に権限移譲してリスクを冒してもらうべきなのだ。失敗してもそれを教訓とし次に進められることを保証されていること、あるいはリスクを冒して挑戦したことを評価することこそが、チームへの最高の動機づけとなる。


PART 3. 海賊を雇え

2016年、アメリカ国防総省で「ハック・ザ・ペンタゴン」というバグ通報報酬プロジェクトが実施された。国防総省の一般向けウェブサイトに対して250人以上が脆弱性レポートを提出し、総額7万5千ドルの報酬が支払われたという。この取組によって少なくとも100万ドルの損失が防がれたと見積もられ、ハック・ジ・アーミー、ハック・ジ・エアフォース等へと続いていった。

日本でもCOCOAの欠陥がマスコミを騒がす等、官僚文化のもと進められるITプロジェクトは失敗続きだという印象があるが、それはアメリカでも同じのようだ。オバマケアへの登録を管理するウェブサイトが2013年10月に開設されたが、2時間も立たないうちにクラッシュし、初日に登録できたのはわずか6人だったという!当初予算は9370万ドルだったが、その混乱を収集するのに最終的に17億ドルもかかったんだそうだ。レガシーな組織、レガシーなシステムをぶっ壊して再構築するためには、とにかくその文化を捨てることだ。イノベーションを語る時間余裕があるような組織にはイノベーションなど起こせない。とにかくのんびりとした歩みを捨て、小さな成功を繰り返し、アジャイルに前進していくことが重要だ。


PART 4. 製品をサービスに変えよ

フィンランドのポポヨラ病院は「患者をどれだけ早く退院させたか」と「患者の満足度」がKPIとなっている、フィンランド最大の銀行グループOPが運営する病院である。銀行のビジネスモデルが永遠でないことに気がついたOPは「病院を効率的に運営し、そこに医療保険事業を結びつけようとした」ことで、自分たちの組織と事業を再編したのだった。これは、誰でも真似のできる狭義のプロダクト・イノベーションではなく、自分たちのミッションやバリューに基づいた包括的なアプローチだ。金融業は生活のあらゆる領域に関係できており、必ずしも銀行という枠にとらわれる必要はない。顧客が解決を望んでいる基本的な問題が、医療やモビリティ、決裁、住宅であれば、それらについてのサービスを顧客に提供すれば良いのだ。


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