たらたらと暇なときに読み続けていた『データ・ドリブン・マーケティング』をやっと読み終えた。
少し分厚目の本だったが、とても丁寧でかつ無駄がなく、事例も豊富で分かりやすく、内容もきちんと網羅されており、大変勉強になった。
会社の本棚から勝手に持ってかえった本だったので、また会社に戻さなければならない。それが惜しい。手元においておいて、必要なときにすぐに読み返せるようにしておくべき1冊である。
そうはいっても返さなければならないので、ここに代わりに簡単にまとめておくことにする。
データ・ドリブン・マーケティングの目的
(マーケティング・ポートフォリオの5つの重要な分野)
- ブランディング
- ①ブランド認知率 により測定
- カスタマー・エクイティ
- 優良顧客への特別オファー、特別イベントの提供、ポイントカード等
- ③解約率、④顧客満足度(CSAT)、⑩顧客生涯価値(LTV) により測定
- 需要喚起
- ⑥利益、⑦正味現在価値(NPV)、⑧内部収益率(IRR)、⑨投資回収期間、⑪クリック単価(CPC)、⑫トランザクションコンバージョン率(TCR)、⑬広告費用対効果(ROAS) により測定
- 市場形成
- ①ブランド認知率、②試乗(お試し)、⑮口コミ増幅係数(WOM) により測定
- ITインフラと組織能力
- データウェアハウスや解析ツール、マーケティング・リソース・マネジメント等へのITインフラの投資
- 営業およびマーケティングチームのスキル向上のためのトレーニング
データ・ドリブン・マーケティングの重要指標15
(マーケティング投資を適切に評価し、またマーケティングそのものを成功させるために、最低限必須の指標)
- ①ブランド認知率
- 商品やサービスを想起させることができるかどうか。インターネットを使用したアンケート等で比較的容易に大規模に測定可能。
- 競合との比較や購買意欲の同時測定も有効。
- ②試乗(お試し)
- 購入前に顧客に試してもらうことで、購買に大きく寄与することができる。そもそも、お試ししようと思ってもらえることが大事だし、難しい。
- 「購入数÷試乗数」として、試乗コンバージョン率を測定することも可能。
- ③解約(離反)率
- 特定の業界において、業績に直結する重要な指標。逆に解約率を測定しウォッチできていない企業は、自社の“顧客”のことを理解できていないに等しい。
- ④顧客満足度(CSAT、Customer Satisfaction)
- NPS(ネットプロモータースコア)に代表される。
- 将来の売上高の先行指標。1回のCSATの計測で議論するのではなく、CSATが上昇傾向にあるか、下落傾向にあるか、管理しなければならない。
- ⑤オファー応諾率
- オファーを受け入れる顧客の比率。
- オファー応諾率を把握できていれば、顧客獲得単価を「オファー送付単価÷オファー応諾率」として算出可能。また、顧客獲得単価を下げるためにはオファー応諾率を上げれば良い。
- ⑥利益
- 必須財務系マーケティング指標
- 利益=売上高−費用
- ⑦正味現在価値(NPV、Net Present Value)
- 正味現在価値がプラスならば投資を実行し、マイナスならば否決する。
- NPVがプラスのマーケティング施策は、それが株価を上昇させることになる。NPVがマイナスであれば株価を下落させることになり、実施してはいけない。
- ⑧内部収益率(IRR、Internal Rate of Return)
- キャンペーンや施策を実施する場合の投資利回り(複利)。
- NPVが0になるような割引率がIRR。
- ⑨投資回収期間
- ROMI(マーケティング投資収益率)は⑦NPV、⑧IRR、そして⑨投資回収期間の3つの指標で見る必要がある。これらを使ってシミュレーションやシナリオテスト、感度分析を行おう。
- ⑩顧客生涯価値(LTV、Lifetime Value)
- 顧客の正味現在価値。NPVとは違い、顧客の継続率(1−③解約率)も含まれている。
- すべての顧客は等しく重要、ではない。重要性の高い顧客を適切に重要視し顧客収益性を高めるために、顧客の重要性をLTVで計測しよう。
- ⑪クリック単価(CPC)
- Google最大のイノベーション。
- ⑫トランザクションコンバージョン率(TCR)
- 広告をクリックしてウェブサイトに遷移したユーザーが商品を購入した割合。
- インターネット広告においてもオファー応諾率(クリック率×TCR)と計算することが可能。
- ⑬広告費用対効果(ROAS)
- 広告費用対効果=収益÷費用
- ⑭直帰率
- 滞在n秒未満で離脱してしまうユーザーの割合
- チャネルごとの直帰率を計測することも、例えばそれぞれごとにURLを準備する等すれば、難しくない。
- 多くのECサイトにとっては、平均ページビューや滞在時間は役に立たない。直帰率を見よう。
- ⑮口コミ増幅係数(WOM、Word of Mouth)
- (ダイレクトクリックの数+友人へのシェアから発生したクリックの数)÷ダイレクトクリックの数
- ④顧客満足度を計測する際の「友人や同僚に勧めたいと思いますか?」に関連する指標。バズリを測定する。
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リーディングリスト(2021年)_20211130
読み終わった本
- テッド・チャン『息吹』
- 楠木建『ストーリーとしての競争戦略』
- ジョアン・マグレッタ『マイケル・ポーターの競争戦略〔エッセンシャル版〕』
- デイビッド・ローワン『DISRUPTORS 反逆の戦略者』
- カール・B・フレイ『テクノロジーの世界経済史 ビル・ゲイツのパラドックス』
- 加藤雅則『両利きの組織をつくる』
- マーク・ジェフリー『データ・ドリブン・マーケティング』
- 山口雄大『この1冊ですべてわかる 需要予測の基本』
- 石川和幸『この1冊ですべてわかる 在庫マネジメントの基本』
- 梅谷俊治『しっかり学ぶ数理最適化 モデルからアルゴリズムまで』
- Judea Pearl『入門 統計的因果推論』
- 岩崎学『統計的因果推論 (統計解析スタンダード)』
- 安井翔太『効果検証入門』
- 榎本幹郎『音楽が未来を連れてくる』
- 森川潤『グリーン・ジャイアント 脱炭素ビジネスが世界経済を動かす』
- 藤田聡『眠れなくなるほど面白い たんぱく質の話』
- 別所栄吾『「お前の言うことはわけがわからん!」と言わせないロジカルな話し方超入門』
- 石野雄一『実況!ビジネス力養成講義 ファイナンス』
- 尾原和啓『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』
- 『徹底攻略 ディープラーニングG検定 ジェネラリスト問題集』
- 『応用情報技術者合格教本』
読んでいる本・読もうとしている本
- ダン・アリエリー『予想どおりに不合理』
- マルク・レビンソン『The BOX コンテナ物語』
- リード・ヘイスティングス『NO RULES 世界一「自由」な会社、NETFLIX』
- 斎藤康毅『ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装』
- 江崎貴裕『分析者のためのデータ解釈学入門 データの本質をとらえる技術』
- AI/Data Science実務選書『AIソフトウェアのテスト――答のない答え合わせ [4つの手法]』
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